「そうそう、俺が美久に電話して、その美少女に会わせてくれって云ったんだけどさ、美久のやつ、今西には会わせないよ~って云ったんだぜ。俺がちょっかい出すと困るんだとよ。全く失礼しちゃうよな」


 俺は内心ほっとしていた。もし今西が会ったら、真っ先に手を出しかねない。



 それから、美少女と会う機会もなく二年の月日が流れた。中学校の卒業式が終わり、隼人と今西と帰ろうとしたのだけれど、二人はにやにやしながら「先に校門で待っててくれ」と云うので、俺は首を傾げながらも一人で校門へ向かった。そこには隣の中学校の制服の女の子が立っており、一瞬ドキっとしたけれど、よく見ると美久だった。


「久し振り! 和哉、ちょっといい?」


 俺は黙って頷くと、美久に引っ張られるようにして近くの公園へ連れて行かれた。


 美久は一緒にベンチに座るように促し、隣で顔を真っ赤にしている。

 もしかして、美久は俺のことが好きだとか云うんじゃないだろうな。そんな俺の想像は当たっていた。


「私ずっと和哉が好きだったの。付き合ってくれない?」


「ごめん。美久とは友達でいたいんだ」


 気の利いた返事も出来ず、俺は淡々とそう答えた。本当の理由なんて云えるはずもない。あの美少女は美久の親友なのだから。


「そっか――。わかった。じゃ、せめて友達でいてね」


 美久はそれだけ云うと、風のように公園を去って行った。

 一人残された俺は薄情なことに、美久のことではなくあの美少女のことで頭が一杯になっていた。