カラオケＢＯＸに着くと、結麻に思いがけない質問をされた。

　時々俺が電話に出ないことを疑問に思っていたようで、浮気しているのではないかと心配していたのだと云う。

　俺は正直に、結麻の側で見守っていたことを話した。


「それなら云ってくれれば良かったのに」


　結麻は口を尖らせている。

　そうだな。もし俺がその時、正直に話していたら、結麻は俺をもっと信用していたのだろう。でも、あの時の俺は嫌われることが怖かったんだ。

　そこで俺達は四年振りにじっと見つめ合い、俺はキスをしたい衝動に駆られた。けれども躊躇する自分がいる。それは結麻に対して傷つけたという負い目がかなり強かったせいだと思う。

　どちらからともなく目を逸らすと、俺は結麻に彼氏がいるのか訊いた。

　曖昧な答えに俺は嫉妬してしまう。あれから四年も経つんだし、彼氏がいても不思議ではない。でも俺だけの結麻でいて欲しいと、そんなふうにどうしても願ってしまう。

　俺に彼女がいるかどうか、結麻に訊かれたけれど、俺は今の正直な気持ちを伝えた。でも結局四年前のことは謝れず、もう一度俺とやり直してくれという一番伝えたい言葉も云えなかった。
　

　結麻は、「Parting tears」を歌った。この歌の通りになってしまった俺達が悲しくて、もうあの頃には戻れないのかもしれないと思うと、涙が零れそうだった。