その時携帯が鳴り、慌てて出ると結麻だった。
 後でかけ直す旨を伝え手短に電話を切ると、隼人が相変わらず複雑な表情をしている。


「あ~あ、じゃ、俺帰るわ。結麻と会うんだろ? 今日は今西にやけ酒でも付き合ってもらうよ」

 
 隼人が帰り、俺は申し訳ないと思いながらも、結麻が恋人になったことの嬉しさを隠し切れず、今西や他の友人にまで自慢の電話を掛けてしまった。その時の俺はどれほど浮かれていたのだろうか。隼人が傷ついていることなどすぐに忘れてしまったくらいだ。


「隼人は相当落ち込んでるだろうなぁ。でもまかしとけよ! 今夜は隼人のやけ酒に付き合うしさ。そうそう、あのドライブの時、和哉と結麻って美男美女で似合うなとは思ってたんだよ。まさか付き合うことになるとは驚いたけどな。しかしお前、あんな美人と付き合うなんていいな~」


 電話で、今西はそう云って驚いていたと同時に羨ましがっていた。他の友人達も一様に同じことを云っていたので、俺は優越感に浸り、結麻に電話を掛け直した時には思わず名前を呼び捨てにしていた。後から自分でそれに気付いたけれど、結麻が嫌がっているふうでもなかったので安堵の溜息を吐いた。