あたしは少しでも唯人くんのことを知りたくなった。

もっと…もっと…彼を知りたい。

「唯人くんは、誕生日いつなの?」

「んー、秘密」

「キョウダイはいるの?」

「秘密」

「家族は何人家族?」

「秘密」

「ぢゃあ…っ、得意な科目はっ?」

「秘密ー」

「ぢゃあ…好きな女の人のタイプは?」

「秘密」

「今までに彼女とか…いた?」

口をモグモグさせてパンを食べていた動きがぴたり、と止まった。

ゆっくりあたしの方を見てにっこり笑って。

「秘密♪」

一つも教えてくれなかった…。

どうして教えてくれないの?

「……教えてくれないの?」

「知っても得なんてしないよ?
だから教えない」

顔は優しくてニコニコしているのに。

声はとっても冷たい。

なんでだろう…。

「…うん、ごめんね」

唯人くんは何も教えてくれなくて。

余計に【仮の彼女】だからぢゃないのかなって思ってしまった。

【仮の彼女】だから私情は教えられない。

他人だから…?

素直に言えばすごくショック。

少し夢心地にいたけど、すぐに現実へと引き戻された。