ガララッ。

保健室に誰かが入って来た。

涙を必至にこらえた。

息をひそめて寝たフリをした。

シャーーッ…。

あたしが寝ているベッドを囲んでいるカーテンが勢いよく開いた。

そして静かにあたしに近付いてくる。


誰…!?

もしかして、タクだったりして……。

嫌だよ、嫌だ。

あたしに近付かないで…っ!


「………紅香…?」

低く、優しく聞こえた声。

この声、聞いたことある。

間違いなく、タクぢゃない…。

もしかして唯人…?


あたしはゆっくり振り向いた。

やっぱり唯人だった。

眉を寄せて顔を歪めている。

どうしてそんな顔するの?

そんなに悲しそうな顔…しないでよ。


「……紅香。守ってやれなくてごめん」


ぎゅっと抱き締められた。

唯人の腕の中にいる。

軽くシトラスの匂いがする。

これが唯人の匂いなんだ。

自然とあたしの気が緩んでいて、震えもとまった。

安心する。