「なに、今の」

爆風に舞った砂埃や小石が、ぱらぱらと音を立てて降る。
そんな微かな音でも聞き逃しようがないほど、静寂が空気全てを包み込んでいるようだったのだ。

その中に飛ばされ転がったまま座り込み、呆然と呟いたのは、紗散だった。
散った小石が当たったのか、白い肌には無数の細かい傷。
細く柔らかいさらさらの黒髪は、吹き上げられた屑や砂が絡んで、見るも無残な有り様になっている。

そしてそんな彼女とほとんど変わりない様子、やはりこちらも事態を呑み込みきれないように呆けている弥桃と涓斗も、同じように細かい掠り傷や、弥桃に至っては倒れ込んだ場所が悪かったのか、硝子の破片が腕に浅い切り傷を作っていた。

そして。
定まらない視点で吐いた、その言葉が指す物。

「小せぇけど…………あれ爆弾、だった……よな」

最後の一瞬、怪物に気を取られた隙に背中に回った雉世が、投げつけた物体を、彼らは確かに目にしたのだ。
掌にすっぽり納まるほど、ゴルフボールよりもやや小さいくらいの大きさしかなかったが、明らかにそれが、衝撃風と高熱、爆音を伴って破裂したのを。

「紗散、ケガは」
「な……なんであいつ、あんなもん持って、……つか、なんであんな強いんだよ……!?」

問いを口にしたところで、答える人もいないのに。
それでも唇を開きたかったのは、不可解で理不尽な状況と、確かに感じた恐怖に対する、無意識の怯えからか。
そして、爆発でヘアゴムが切れて肩に落ちた、紗散の髪の底知れないような黒が、目に焼き付いた姿を思い出させた。