そうして雉世が動きを止めるに至った理由、その先で目が合った彼は、やはりやる気なさげに首を傾けた。

「勝敗、どーやってつくの」

人に尋ねるのに語尾を上げるでもなく、自問のように、そして暗に、雉世の動きを封じた時点で自分の勝ちなのか、それともまだやるのか、そんな問いも込めて。
雉世は、体の底からなにか言いようのない感情が沸き上がるのを感じた。

「………………はは、」
「……?」
「あはっ、舘端くんて、ほんと面白いよね」

弥桃は眉を潜める。

貼り付けたような綺麗な笑顔で乾いた笑い声をあげる雉世にいつもの優等生然とした雰囲気は少しもなく、どう見ても“異様”だ。
よく『目が笑っていない』などという表現を耳にするが、この時の彼は、端から見れば心から笑っているようで、目も、口許も、声も、全身が、全く笑っていなかった。

「……佐津賀……?」
「おい、何だよ急に、」

さすがに気味が悪くなって怖々と声を掛けるが、彼の視界には弥桃達どころか、なにも入っていないような気さえする。