長く感じた午後の授業も終わり、帰りのHRが始まる前、再び眠気が襲ってきたあたしは、机に頭を付して、横を向いていた。
「優歩?どーした?」
悠斗が爽やかな笑顔を零しながら、声をかけてきた。
「あー…んー…いや、」
「ん?」
「あんた、いつ見ても爽やかだね」
「…え?」
困ったように笑う顔も様になるこいつは、もはや女殺しだな、うん。
「あー…悠斗」
「ん?何?」
「1組の川村?くんって知ってる?」
「川村?あー…翔真(ショウマ)のこと?」
「翔真?いや翔真かどうかはわかんねーけど…んーと、確か1組でバスケ部のエースって人」
「あーそれ翔真だよ」
「友達なん?」
「うん。陽輝と一緒で小学生からの友達」
「ふーん」
「翔真がどーかした?」
「あー…」
あたしと仲良くなりたいらしいなんて言える訳ないから、言葉を濁して「悠斗の次に人気あるらしーよ」と答えた。
まあ嘘ではないからいーべとか思ってるあたしに悠斗は「何それ。俺別に人気ないし」と驚きながらそう言った。
自覚ないのか!?
だから嫌味がないのか、こいつは!
お前の今のその驚いてる顔にさえ、世の中の女の人が見とれると思うよ、あたしは!
「てか翔真となんかあったの?」
…おぉ!そうだった!
すっかり話がズレた!
「いや…「優歩!今日の放課後でどーだ!」
ナイスタイミングとはまさにこのことだと思った。
たった今、説明しようとした矢先、西田が話に割り込んできた。
何も知らない悠斗は「何が?」と聞く。
「なんか川村がさ、優歩と仲良くなりてーらしいんだよ。だから紹介しようと思ってよ」
「あー…だから翔真ね」
そう言った悠斗はあたしをチラっと見た。そして「んじゃーさ、森山とか陽輝も誘ってみんなで遊ばね?」と続けた。
ナイスアイディア!
あたしも二人は気まずいとか思ってたんだよ!
なんて気が利くの!
そりゃモテるはずだよ、うん!
だからあたしは「優歩?俺ら混ざっていい?」という悠斗の問いに「もちろん。紗耶も誘うし」と満面の笑顔で答えた。