『へー。
 って事は、田口と井上の好きな人って
 うちか葵ってこと?』

陵が意地悪そうに言う。

『ま・・・まぁ・・・』

二人が口を揃える。

キーンコーンカーンコーン
ちょうどよくチャイムがなる。

『じゃあ続きはまた来週』

田口がそう言って
私の前の席に着いた。

今日は金曜日。
二日も会えないのか・・・。
憂鬱だなぁ。

明日は、バスケ部も
バレー部も秋の新人戦。
3年生も引退して
今まで頑張って練習してきたおかげで
私は、レギュラー入りを果たした。
そして田口も。

どうだ!!
忘れてた。
゛頑張れっ”って言わなきゃ。

『ねぇ?田口』
『ん?』

田口が振り向く。
また目を逸らしてしまう。

『えーっと・・・』

えっ!!やばい。
言葉が出てこない。
もー何でよ!?

『あー。ううん。何でもない』
『そう?』

また前を向いてしまった。

はぁぁぁー。

聞こえないように
大きなため息をつく。


何でたった一言が言えないのかな?

が・ん・ば・れ

たった4文字だけなのに。
本当に私って馬鹿。
こんなんじゃ
気持ち掴めないよね・・・。