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眼を開けると、ぼやけたクリーム色が視界を支配した。



…久しぶり、クリームくん。




見慣れた色を一瞥すると、頭を横に向けて、傍らにいるであろう人を探す。


人物はいなかったが、ベッドの左隣にある椅子に鞄が置いてあるのに少し安堵して、ふう、と息をはいた。


やけに気だるくて緩慢な動作になってしまう。

意識とは裏腹に、機敏に動いてくれない体に若干苛つきながらも、やっと上半身を起こした所で、探し人が現れた。




「おう。起きたか。」



「ん。点滴も終わったみたいだね」


扉に寄り掛かる兄に左腕に貼ってあるガーゼを指差して、ひひっと笑うと、兄は呆れたように腕組みをして近付いてくる。


そして、頭を叩かれた。




「…ええっ!なんで?!」


何故叩かれたのか皆目検討も付かずに眼を丸くしていると、兄は鬼のような形相で捲し立てた。


「また寝てねぇんだろ?!先生言ってたぞ、睡眠不足が原因だって!」


「……いやぁ、はは」


頭を掻きながら、視線を逸らす。
そんな態度が気に障った様で、兄はより一層に険しい表情になった。

しかし、表情とは裏腹に消え入りそうな声で一言呟くと、部屋を出ていってしまった。



兄の背中を気まずく見送った後、入れ替わるように白衣を着た人物が入ってきた。