姿が異様だからなのか
雰囲気が人間ぽくなかったからなのか
単に興味がわいたからなのか。
気付けば階段を降りていって
黒傘の前に立っていた。
はあっ、と息をはく。
走ってきたものだから呼吸が荒くなってしまった。
一旦、膝に手を置いて呼吸を整えて、黒傘の中の人物を見上げる。
そして、唖然とした。
…なんだ、これ。
真っ直ぐに私を射抜く瞳は、燃え盛るような緋色。
熱くて、鋭くて
でも、何処かに哀れみを含んだ…
そんな瞳。
眼が、逸らせない。
息が、苦しい。
「――…お前、もう見えるのか?」
その声に、金縛りにでもあったかのように硬直していた体が震える。
体の奥まで響くような、低音と
耳が熔けそうになるような甘い声。
なんだ、こいつ。
頭の中で、警鐘が鳴り響く。
――チカヅクナ。
――…ニゲロ!!
そうやって頭は叫んでいるのに、体が動かない。
緋色の瞳に眼が離せなくて
低く、甘い声に胸が震えて―――――…