「へ。なにを?誰に?」
間抜けな声を出して尋ねると、一層に顔を赤らめていく。湯気でも出そうな勢いだ。
そんな彼女をまじまじと見ていると、顔を挙げた京香さんはものすごい笑顔で
「…祥ちゃんに、初めて《愛してる》って言われたの!」
「…………はあっ?!」
とけるように笑う京香さんとは正反対に、眼も口もあんぐりと開けて間抜けな声を出す私。
今日が初めて?
五年も付き合っておいて?
信じられない思いで、京香さんが喋る内容に耳を傾ける。
「祥ちゃん、かなり口下手でしょ?だから付き合ってから一回も《好き》って言われたことなかったの。」
…ああ。口より行動派だから、兄ちゃんは。
「それで三日前くらいに大喧嘩しちゃったの。私のことどう思ってるの!言ってくれなきゃわかんない!って怒鳴り散らしちゃって…」
苦笑する京香さんを見ながら、三日前の兄を思い返す。
…ああ。夕飯がレトルトカレーだった日だ。
料理は兄が作っていて、彼の気分次第でレトルトか美味い手料理かになる。
ちなみにレトルトは極力避けたいらしく、風邪で体が動かなかったり大学のレポートが間に合わないとかのよっぽどの時以外は料理を作ってくれるのだが……
なるほど。
京香さんが原因だったか……。