「…京香。突っ走るのは止めろっつっただろ。」


呆れたように見下ろす兄に、京香さんは肩をすぼめていく。


「…兄ちゃん、彼女には優しくしなよ。」



布団から頭を出してそう言うと、兄と京香さんは二人して顔を赤らめていく。


五年も付き合っておいて、なんだその反応。とからかうように笑うと、二人から同時に頭を叩かれた。



「痛いんだよ二人とも怪力なんだから!!」


頭を抱えて涙目になって抗議する私を他所に、兄は部屋を出ていき、京香さんはベッド脇でへなへなと座り込んでしまった。




「…どーしたの」


体を起こして彼女を見ると、これでもかというくらいに顔を赤くしている。

…なんか、可愛い。
兄と同じ歳…今年二十一歳になる彼女は、綺麗というより可愛いと感じさせる女性だ。
栗色のふわふわした髪に、丸くて小さい顔。眼がくりくりと大きくて、鼻がちょん、と小さく置かれている。
背も小さくて、何だかぎゅっと抱き締めたくなるような。

そんな可愛らしさを持つ女性。

だから、顔を赤らめてぺたんと座り込んでいる彼女は、女の私から見ても可愛いのだ。






「……今日、初めて言われたの」


ほんわかとしながら小さな姿を見ていると、溢すように小さく呟く京香さん。