「…カヨ?」
「もっと、呼んで……」
「………カヨ……………カヨ…………―――」
頬に感じる冷たさと、耳に残るような甘い声がすごく気持ちいい。
ふわふわと飛んでいきそうになるのを、ギンジの声で繋ぎ止めていた。
「…ギンジ。」
「…………なに?カヨ…」
「私は、強くなんかないんだよ。」
「…ああ。解ってるよ―――…」
その言葉の後、額に冷たさが乗ったかと思うと、すぐに消えた。
頬に感じるのは、温かさだけ。
眼を開けると、ギンジの姿はなかった。
頬にある掌を額に当てる。
ひんやりとした、柔らかい感触。
…キス、されたのだろうか。
彼のいた空間を眺めて、ふう、と息をはく。
死神の、ギンジ。
鋭くて、優しげな
緋色の瞳の、優しい死神。
夢か現か。
私には判断が出来ないけれど
夢じゃなければいい、と強く思った。