「…え」



頭の中が真っ白で,変な感覚に襲われた。



「今はN病院に向かってるって…,香織?大丈夫?運転変わるか?」

「……」

「香織?!」



返事ができない。


うん大丈夫だよ。


にっこり笑ってそう言いたいはずなのに。

笑えない…。

体が硬直し,動けない。


涙で世界がぼやけている。



「香織。運転変わるよ。降りて。」



言われるがまま,バイクを降りて後ろに乗った。



「祐なら大丈夫だよ」



菜子はそう言って,エンジンをかけた。

病院に向かっている途中,何も見えないし何も聞こえなかった。


脱力してしまい,涙を手で拭う事もできないでいた。