−音彩さんは笑いながら、奏斗を見ていた。

『離せ。俺は、彼女いるんだから。』

−そう言って、あたしを引き寄せた。

奏斗はあたしを見て優しく笑った。

「うん…。」

「へぇ、彼女。」

−音彩さんは、奏斗に近寄った。

「あたしね、奏くんに言いたいことがあって。」

『あ?何だよ。』

−音彩さんは笑ったと思ったらシャツを引っ張ってキスした。

ギャー!!

『何、すんだよ!』

「…好きなんだもん。」

『知らねぇよ。』

−冷たく言うと音彩さんはその場に崩れ落ちるように、泣いた。

「うわぁーん!!」

−何なの、こいつ。ウソ泣き?

奏斗はため息をついて、音彩さんを立ち上がらせた。
『…泣くな、迷惑。』

「ひっく…。」

『……わりぃけど、お前を好きになることはないから。』

−奏斗はそう言って、あたしの手を握って横を通りすぎた。

すると、音彩さんはあたしにだけ聞こえるように小さな声で呟いた。

「自惚れないでよ。あんたなんか…奏くんは、奪うから。」

−冷たく笑った。

あたしは、無視して歩いていた。
音彩さんの妬みを背中に感じながら……。