てっきり自分の身の回りのことにまで、手が回らないタイプの人が出てくると思っていたが、裏切られた。

彼女はビシッと黒いスーツを着込み、化粧も濃すぎることなくそのクセ、ばっちり綺麗に施されていた。
 
彼女は専業主婦ではなく、類の尊敬する、“働く母”なのであった。
 
まだスーツ姿だと言うことは、チビたちを学童保育や保育園から連れて戻ったばかりなのだろう。
 
早く着替えて、子供達に、晩御飯を作ってあげたいだろうのに。
 
何だか、それを妨げている師匠が恨めしくなる。

「それで?あたしがお義兄さんの浮気相手なわけ?」
 
言うと、彼女はクスクス笑った。
 
オニイサン?
 
類は師匠の顔を見た。
 
師匠は類に軽く頷いた。
 
いや、頷かれたって、何のことだかさっぱり分からないんですけど。
 
思っていると、

「彼女は浮気相手なんかじゃありません。私の弟の奥さんです」