「どうかお願いします」
 
でも、類に、この依頼を蹴る決定権はないのだ。

「分かりました」

類が言うと、師匠は頷いた。

「それでは失礼します」

田口婦人は立ち上がった。
 
類も、残りの休み時間が少なくなっていたので一緒に立ち上がった。
 
もう少し時間があったら、パフェとか定食とか、師匠のおごりで食らってやるところなんだけど。
 
類は後ろ髪を引かれる思いだった。
 
喫茶店を出ると、一歩先に店を出ていた田口婦人がくるりと振り返った。
 
そして、豊満な、というかふくよかというか、単なるデブといった方が早い身体を類に摺り寄せてきた。 

「ねえ、ナルセクン」