「何かあったの?」

聞いてはいけない気がした。
それは事実。
でも今聞かないと、きっと星は一生言ってくれないんじゃないかと思った。

「………」

星が俯いてしばらく黙っていると、私の手が解放される感覚がした。

さっきまで握られていた右手を見ると、その手は解かれ、ふと見た海ちゃんの左頬には涙の筋ができていた。

「海ちゃん?!」

びっくりして少し声をあげたが、海ちゃんは眠っているようだった。

「…海……」

小さく呟いた星は、バッと顔をあげ、

「昴っち、寮まで送るから…俺の独り言、聞いて」

強い意志が伝わる瞳で、そう一言紡いだ。