「なんであんたがここにいるの?」


振り返るとそこには…山代千晶がいた。


「や、山代さん…。」

「遼と待ち合わせてたの?」


マズい…。


「違うよ!たまたまパフェ食べたくて来たの…。本当に。」


「あれ、千晶、まだいたの?」


遅れて出て来て遼が言う。


「遼…、この子のこと、待ってたの?」

「そうだよ。」

「りょっ…。」

「俺、唯が好きなんだ。だからもう俺のことは諦めて。」

「…!」


千晶は顔を赤くして怒って帰ってしまった。

どうしよう。

誰かに話すだろうか。


「唯、ちょっと付き合って。」


呆然とするわたしの手を引き、遼は歩いていこうとする。


「遼…!やめて!」


わたしは力を込めて振りほどいた。
もう振り回さないでって言いたかった。

それなのに、

遼がすごく悲しそうな顔をしたから、

何も言えなくなってた。


「唯…、ごめん。俺、迷惑だったみたいだね。」

「遼…。」


遼はわたしの顔をじっと見つめた。


思ったより瞳は黒かった。


そしてすぐ、踵を返して行ってしまった。
帰宅後、達志に遼と会ったことを言おうか迷った。

でも、何をどう言えばいいんだろう。


何度も通話ボタンを押そうとした。


結局、できなかった。


言わなきゃ、伝えなきゃわからないなんて、わかってたはずなのに。
翌日学校へ行くと、達志は来ていなかった。

なんとなくほっとしてしいるわたしがいた。

クラスの様子もかわりない…。


千晶が昨日のことを誰にも話していないなら、下手に言って失敗するより良かったなんて思ってた。


でも達志はどうしたんだろう。

そっとメールしてみる。


返事は昼休みの少し前にきた。

『屋上にいるから来て』


昼休みになると、理美に声をかけ、お弁当を持って屋上へ向かった。


天気がいい。


達志はすぐ見つかった。


「よ、」

「おはよう。」


わたしは達志のそばに行くと、達志は座り、わたしも隣に座った。


「今日、寝坊?」

「あ、うん…ちょっとな。」


なんだか目が腫れぼったい気がする。


「寝不足?」

「ああ…まあ。飯、食うか。」

「?うん…。」


何かあったんだろうか。
元気がない…。
「どうしたの?元気なくない…?」


わたしは思い切って聞いてみた。


「ああ…ごめん。ちょっと親父とケンカしてさ。」

「何かあったの?」

「いや、いつものこと…。」



沈黙。



「…でも、前田といると落ち着くよ。」

「…ほんと?」

「うん。寧ろ眠い。」

「なにそれ…。」



わたし達は笑い合った。
「なぁ、次の休み…どっか行かねぇか?」

「えっ…、うん!行く!行くよ!」

「すごい食いついたな。どこがいい?」

「えとね…遊園地?動物園?水族館?」

「そういう系ね。笑」


達志が少し元気になって、わたしはほっとした。

同時に初めてのデートにうきうきした。

初めてのデートかぁ。
緊張するなぁ…!
わたしはその日からデートのことで頭がいっぱいで、何着て行こうか、ずっとわくわくしてた。

行き先は水族館に決めた。
その水族館はちょっと遠いけど、カップル向けですごくデートっぽいと思ったから楽しみだった。

だから達志が今どんな気持ちでわたしといるかとか、何も考えられなかった…。
明日は休み。

とうとう明日はデートって感じで、待ち遠しい。

今日はひとりの下校も足が軽い。


わたしはいつもの公園を通り掛かってた。


すると、何か声が聞こえた気がした。


何だろう…?


わたしは声のする方を見てみた。

すると、山みたいになってる芝生から、人が転げているのが見えた。