町は平和な姿を取り戻した。
山姥が起こしたなんて、人間は知る由もない。だけれど、冬矢達には、ある程度の印象を植え付けられた。僕はそれでいい。今回は、それが目的だったのだから。
「トラツグミ様……」
鴆が呼ぶ。僕はいつまでも、町を見ていた。とっても、のんきで、平和ボケした町。僕はこの町が好きだ。美しいといつでも思う。夜になれば妖怪たちが集まる。
妖怪が好きだ。妖怪はそこにいる。それだけで恐ろしくもなる。そこが、僕にとっては何よりも惹きつけられる魅力。僕は妖怪が大好きだ。愛している。
だから、この町が、闇に沈んでくれれば、もっと美しいだろうに。この世界が、純粋な黒で塗りつぶされたら、どれほどに美しいだろうか。それが、僕は楽しみで仕方がない。
「楽しみだ……。早く、この町を黒の世界に変えたい」
この町が闇に塗りつぶされれば、僕は目的を果たせるんだ。何度も何度も夢見た。狂おしいほどに望み続けた目的が、あの日から僕に芽生えた目的。それが、今、手が届くところに見える。楽しみだ。この町を必ず、手中に収めて見せる。
そのための力を、ようやく手に入れることができた。もう目的の実現は近い。
白と黒の町。人と妖怪の町。
阿弥樫町。
僕は、その町を、いずれ黒く染める。
僕は鵺となる。
君は、どうするのかな? 待ってるから、何か止めてみてね。
冬矢。雪女の息子。
黒と白の灰色の君。
待ってるから、遊ぼうね。
じゃあ、
バイバイ