町は平和を取り戻した。事件は迷宮入りとなったが、それでも事件はもう終わったのだ。もう誰も夜の恐怖に震えない。山姥の山妖怪によって町が脅かされることもない。
そんな中で、まだ残る疑問。まだ残る嫌な予感。最後に現れた鴆。彼女はまた会おうと言い残した。山姥はただ、操られただけ。ただの傀儡(かいらい)。黒幕がいた。その黒幕が、あの羽根の主。トラツグミ。すなわち、鵺。
「……この平和が、いつまで続くんだろうな」
夜、店じまいをした後、カウンターで冬矢と烏丸が二人、飲んでいた。
こうして二人で飲むのも久方ぶりだった。
「さあ。でも、山姥が消えて、あの変な事件が治まった。今はそれでいい」
「楽観的だな」
「僕はそうして千年生きて来たんだ」
烏丸は笑う。確かに、まだ起きない未来を考えるのはまだ早い。今は平和。それでいいのかもしれない。何も対処ができないのなら、起きた時に対処するしかないのだから。それからも二人は酒を酌み交わした。