「……えぇ子やな。ご褒美に、永遠の命をあげようか」
すべて食べ終えるのに大した時間はかからず、秀明は山姥に微笑みかけた。
その微笑みに、もう山姥は恐怖を抱くしかなかった。そして自分を悔いた。自分を責めた。とんでもないものを起こしてしまった。とんでもない化け物の逆鱗に触れてしまった。なぜ、復讐を考えてしまったのだろう。なぜ、こんな愚かな行動をとってしまったのだろう。死にたい。死んで、この痛みから、苦しみから、何より恐怖から逃れてしまいたい。
何度も何度も願った。
それなのに、秀明は言った。
『永遠の命』
誰もが一度は憧れるだろうその甘い言葉は、今の山姥にとっては、大きな絶望でしかない。
「このまま、お前を式鬼紙として封印する。一生、お前は紙の中で、永遠に生き続ける。呼び出しはしない。大切に、お前の紙を守ってやる。決して、お前は朽ちない。永遠だ」
紡ぎだされる言葉は恐怖。
秀明は自分の指を噛み切り、自らの血で札に術式を書き込んだ。
札はゆっくりと、山姥に迫って行った。
永遠の地獄の苦しみが、目の前に迫る。山姥は目を固くつむった。