「うぁああぁああぁあああああああああ!」
がしゃどくろの叫びは全体をひるませた。洋子も烏丸も天野も、誰もかれもが耳を塞いでうずくまって、立ち上がれない。
腕を振り上げて、百鬼をたたきつぶす。骨の手をよけることもできずに、数々の妖怪が無抵抗のままに潰された。
何度も何度も、がしゃどくろは腕を振り上げて百鬼をたたきつぶしていく。
アァァァァアアァァ!――
悲惨な叫びがいくつもいくつも彼らの耳に突き刺さる。
がしゃどくろの叫びが続く限り、誰もその音に立ち上がれない。
ただ耳をふさいだまま、仲間が潰されていくのを見ることしかできなかった。
「カラス! なんとかしてよ! 烏天狗なんだから!」
「お前だって管狐なら神通力の一つでもやってみろよ!」
仲間が潰されて何もできないことにより、苛立つ二人は喧嘩を始める。
そうしていくうちに仲間は次々とがしゃどくろによって潰されていく。
叫び声は絶えない。
誰も立ち上がれない。
やはり、がしゃどくろという化け物を相手取るのは無謀だったかもしれない。
そう、誰もが諦めた。
その時に、
「……何、やってる…………?」
鈴のような声がその場に響いた。
叫びが一瞬止まる。その瞬間に、がしゃどくろの手は止まった。
あばら骨の上に人影が見える。黒髪。圧倒的な存在感。
「恭子さん……」
「遅れた……ごめん」