「あー……空気読め。がしゃどくろ」
一方でトラツグミは毒を吐いていた。
一転してまた攻めに入ったがしゃどくろに向けて、毒づいていた。
「……私が行きましょうか?」
長い戦いになるだろうとの理由で座っていた金髪の少女が立ち上がる。
だがそれをトラツグミは手で制した。
「ですが、このままでは百鬼が壊れます」
「いや、それはないさ……」
口元に笑みを浮かべ、トラツグミは戦いに目を離した。
漆黒の瞳が、少女にまっすぐに注がれる。
「お前、あいつら見くびらない方がいいぞ」
「正確には雪代冬矢」
「まあ、そう言うことも言えるかもしれないな」
ニシシッと彼は笑う。ちらりととがった八重歯が見えた。
少女はじっと見つめていた。その眼には、複雑な感情がこもっている。
「はじめは男と知らずに惚れたっけな。髪を切った今じゃそれはないけれど」
「……」
ああやっぱり。ぼんやりと少女は考える。
目の前の彼は、強く美しい妖怪を好きになるのだ。
自分程度の妖怪では、彼の眼にもとまらないのだろう。
混血の異端児は、彼の眼にはとても魅力的に映っていただろう。
自分は、どう映っているのだろうか。考えるのは怖い。
「……」
自分は誰よりも彼のそばにいたのに、彼の眼には映っていない。
憎い。彼の目に映る妖怪すべてが憎い。殺してしまいたい。
だが、自分ごときが彼の眼に映る妖怪に敵うはずもない。
「……嫉妬でもしてるのか」
「嫉妬しても、敵いっこありませんから」
「そのとおり。お前ごときじゃ、敵わない。俺は絶対、お前には惚れてやんない」
彼の言葉が、少女の胸に突き刺さる。
もう何度も言われた言葉。それでも彼に失望したこともない。幻滅もしない。
彼は自分を助けてくれた。彼の目に映ろうが映るまいが、自分は彼の為に動く。
そうすることが、自分の存在理由だから。
「それよりもお前も見とけよ」
「……そうします」
下らぬ考えは止めた。
少女は言われるままに、百鬼の戦いに目を向けた。
一方でトラツグミは毒を吐いていた。
一転してまた攻めに入ったがしゃどくろに向けて、毒づいていた。
「……私が行きましょうか?」
長い戦いになるだろうとの理由で座っていた金髪の少女が立ち上がる。
だがそれをトラツグミは手で制した。
「ですが、このままでは百鬼が壊れます」
「いや、それはないさ……」
口元に笑みを浮かべ、トラツグミは戦いに目を離した。
漆黒の瞳が、少女にまっすぐに注がれる。
「お前、あいつら見くびらない方がいいぞ」
「正確には雪代冬矢」
「まあ、そう言うことも言えるかもしれないな」
ニシシッと彼は笑う。ちらりととがった八重歯が見えた。
少女はじっと見つめていた。その眼には、複雑な感情がこもっている。
「はじめは男と知らずに惚れたっけな。髪を切った今じゃそれはないけれど」
「……」
ああやっぱり。ぼんやりと少女は考える。
目の前の彼は、強く美しい妖怪を好きになるのだ。
自分程度の妖怪では、彼の眼にもとまらないのだろう。
混血の異端児は、彼の眼にはとても魅力的に映っていただろう。
自分は、どう映っているのだろうか。考えるのは怖い。
「……」
自分は誰よりも彼のそばにいたのに、彼の眼には映っていない。
憎い。彼の目に映る妖怪すべてが憎い。殺してしまいたい。
だが、自分ごときが彼の眼に映る妖怪に敵うはずもない。
「……嫉妬でもしてるのか」
「嫉妬しても、敵いっこありませんから」
「そのとおり。お前ごときじゃ、敵わない。俺は絶対、お前には惚れてやんない」
彼の言葉が、少女の胸に突き刺さる。
もう何度も言われた言葉。それでも彼に失望したこともない。幻滅もしない。
彼は自分を助けてくれた。彼の目に映ろうが映るまいが、自分は彼の為に動く。
そうすることが、自分の存在理由だから。
「それよりもお前も見とけよ」
「……そうします」
下らぬ考えは止めた。
少女は言われるままに、百鬼の戦いに目を向けた。