そこに立っていたのは、女物の着物を着こんだ白骨だった。
カタリと音を立てて、彼女に近づく。カタカタと音を立てて、彼女に近づく。

「キャーキャー騒ぐな醜女が。ややこしくなるだろうが」

白骨はどこからか、声を発している。女の声だ。さらに白峰は恐怖で足がすくむ。
そして近づいていく白骨。

「だから女は嫌いなんだ。さっさと殺してしまいたくなる」

白骨の手が伸びる。恐怖に固まる白峰は、そのままその光景を見るしかなかった。


「そこまでだ。骨女」

その時、白峰の背後から声が聞こえた。聞きなれた声。先ほどまで考えていた男の声。
振り返ることはできない。だが、誰かはもう分かっている。

「編集……長……」

秀明がそこに立っていた。白骨は秀明をみてカタカタと音を立てて笑った。

「本当に来た! へぇ……なかなかいい男じゃないか……。なら、このまま骨だけじゃ、失礼ってもんだろうねぇ……」

カタリとまた音を立てて、着物をまとった腕で顔を隠す。そして隠した腕をおろせば、そこには女の顔があった。妖艶な魅力をもつ女の顔。
突然の変化に、白峰の思考が止まり、ただ口をあけるだけだった。

「この町には俺がいる。俺がいる前で、人に危害を加えたら、どうなるかは、わかるな」

じっと、秀明は骨女を睨みつけ、その手に札を持つ。骨女はにやりと笑った。

「自己紹介でもしようか? あたしは骨女。男に捨てられた女のなれの果てさぁ」

にやりと妖しく、骨女は笑った。