「……き、気持ち悪ぃ」
じっとりとした視線を感じて、冬矢は店の外を見た。そして、寒気を感じた。
脂っこい眼鏡をかけた男がこちらを凝視していた。会ったことのない見知らぬ男の覗きにはさすがになんでも、気持ち悪いと感じる。
「……見てこようか?」
「消していけよ」
「……」
男に見つめられる趣味も覚えもないために、恭子がその男の元へ行って様子を見てくることにした。ぬらりひょんである恭子は気付かれることなく接近することができる。要するに、あいつを徹底的に観察して来いという事だ。
「……報告」
「よし、聞こう」
しばらくして、恭子は戻ってき、ノリノリで敬礼をしてきた。
「名前は室井博人、28歳。花宮の雑誌の記者で、定期入れの中にアニメキャラのイラストを入れて鞄の中は、オカルト雑誌がギチギチ。携帯のメモリは6人ほど。雪女萌え」
「……どんだけ調べてきたんだ」
調査結果の収穫量の多さに、若干顔が引きつる。他人から気にされることもないので堂々と携帯と鞄の中身、財布の中身、すべてを覗く事は、良い神経している。だがその情報を整理していく中で、一つ気になる情報に気付いた。
「兄貴の部下? マスコミが何の用だ」
雑誌の取材は白峰からすでにしつこく受けている。もうネタはないはずだ。
「百鬼夜行について調べてるみたい。百鬼夜行を率いた男として、目撃されている」
「誰が?」
「冬矢……」
「はぁ!?」
調べている内容は、最近怪奇事件と一緒に注目されている、百鬼夜行事件。怪奇事件と同日に目撃されているために、事件の関係も懸念されている。その百鬼夜行を率いる男が、冬矢だというのだ。
そりゃ驚く。
「え、えぇえぇぇ……」
その日から、人と会話能力不足の記者の密着(覗き)取材を受ける羽目になった。