「烏丸先生」
それでも、残りの半分は心配と怒りが混ざったもので荒れていた。不安で不安でたまらない。その不安から逃れるために、放課後に烏丸を呼びとめた。
「どうした。早く帰れよ」
「……先生、あの……今夜、行ってもいいですか」
家に帰っても、今日も秀明は帰って来ない。強がってはいても、事件続きのこの町で、一人で夜を過ごす事は、怖くて不安でできそうもない。また、あの日の様に、居酒屋に行ってもいいのか、烏丸に聞く。
「最近多いな。まあ、僕は別に気にしていないが、帰りはどうするつもりだ? 僕が送ろうか?」
烏丸はその不安は少なからず気付いており、一人が不安ならと思うのだが、帰宅するときは、完全に妖怪の領分である深夜になるだろう。そのほうがよっぽど危険だ。
だが、それを言えば、陽は急にもごもごと、言葉を出す事をためらいだした。
「その……泊まっても、良いですか? 先生たちの家」
「え……っ。あ……」
赤面しながら申し訳なさそうに頼む陽。泊まりたいという申し出はできれば受けてやりたいが、教師と生徒という関係もある。それを言えば洋子もそうなのであるが、しばらく考えた後、結局は冬矢に許可を取る事に落ち着いた。
「一人が怖いならどうぞ。だと」
「よかった……」
ほっと陽は胸をなでおろす。
そのタイミングで、クラスメイトの急かす声が耳に入り、陽は挨拶をしてから帰った。
烏丸は、ため息を一つこぼす。
「帰ってやってもいいのに。何をしているんだあの人は……」
秀明の事は、どうも問題解決には時間がかかりそうだ。