捜査を進める警察。取材を続ける白峰。一人で探る秀明。彼らの思いをよそに、人はまた死んだ。夜中に送られた彼岸花。送り先は、またも冬矢の店の常連であり、阿弥樫高校の生徒でもある少女だった。

「皆さんも知るように、伊藤さんが連続通り魔に襲われて亡くなりました」

生徒には連続通り魔と言ったが、烏丸も事の犯人が人間でない事は遺体の状況を聞いたときに分かっていた。今度は右肩を食いちぎられていたそうだ。人を食う妖怪は腐るほどいる。雲をつかむような話だ。それでも、生徒たちだけは教師として守らなければ。
目の前で、生徒たちは不安にぼそりぼそりと会話していた。ウワサしていた。恐怖がこの教室に充満している。

「怖いね、陽」

「……うん。そだね」

陽もまた一連の事件に恐怖を感じる一人だった。そして、前よりも悪化して戻って来ない父親に憤りを感じていた。もう三日も顔を見ていない。死亡のニュースは報道されていないから生きているとは思うのだが連絡しても電話に出てくれなければ嫌でも不安になる。

「千夜、一緒に帰ろうか」

「ありがと」

二人以上で帰る事を学校ではよく心がけるように言われている。そのために陽はクラスメイトと帰る事にした。秀明の事は、考えても仕方がないと半分諦めの気持ちもあった。殺しても死ななそうなタイプでもあるし。