「六つまでは皆知っていますが、七つ目までは誰もしらない」

「知れば死ぬ、だろ」

ありがちな設定はどうでもいいから早く内容をいえよ。
目でそういう言葉を発信しても、なかなか室井は応じない。実際に行方不明になった生徒が過去にいると熱弁している。
また周囲を置き去りにする空気がしてきた。聞き流せば怒って、面倒になる。だが聞いている間は時間の無駄。
どうしろと?



「まあ、内容はありがちで音楽室のピアノや火の玉が浮かぶってだけですけどね」

「…………」

長いこと語った割には、肝心な内容が薄い。拍子抜けしてしまい、思わずため息をもらした。それが室井の気に触れてまた面倒なことになった。


室井の怒りを抑えたところで、また改めて秀明は缶コーヒーを口へ運び、原稿チェックへと戻る。
原稿へ行き渡らせる目を少しだけそらし、机上のパソコンで妖怪研究サイトの管理をする室井の姿。
大きく秀明はため息をつく。

目の前のオカルトオタクは何度も言った。
『妖怪のすべてを知りたい』と。
妖怪に心惹かれるのはいいが、そんな感情は妖怪からは願い下げだろう。
外見や性格が原因ではない。妖怪を知ろうというその追究が余計なのだ。