小学校に弟を連れに行った。そして、先生の制止を振り切り連れ出した。弟の手を握って走った。

自宅に荷物を取りに帰ると…大騒動になっていた。荷物を諦め、全財産を握りしめ、弟の手を引いてバス停まで走った。いつものバス停と逆方向。いつものバス停の2つ向こう。

…田舎なので…バスも一時間に一本あるかないか。その時バスはなかった。でも…じっとしていたら、捕まってしまう。弟の手を引いて出雲の駅に向かって歩いた。今思えば…逆に行くとか、途中の駅から汽車に乗ればと思うが…その時は必死で考えもつかなかった。

だいぶ歩いたがまだ半分も歩いていない。のども渇くし、足も痛い。途方にくれながらも歩いた。

一台のトラックが、あたしたちを見つけた。
あたしたちはわからなかったのだが、その男の人はあたしたちをよく知っていた。住所も家族構成も。疲れていたあたしは、その人を信用した。
出雲の駅に向かっていると告げると、乗せて行ってあげると。
トラックに乗せてもらい、出雲の駅に着いた。お礼を言い、切符売り場に走った。値段を見ると大阪まではいけない。仕方なく、行けるとこまで行こうと、窓口に声をかけようとした時…肩を捕まれた。
あたしの担任だった。

そこから、担任の車に乗せられ…家に戻された。
死を覚悟した。何も考えられなかった。