仕方無く隣に座ってみた。

頭を彼の右肩にのせてみる。
反応なし。
具合が悪いのだろうか。
それにしては、ずいぶん急な症状だ。
機嫌が悪いのかもしれない。
でも、理由がわからない。

突然、彼は私ごとベッドに倒れ込んだ。

「俺も昼寝しようかなぁ」

私が昼寝してたみたいな言い方だ。
朝寝坊は認めるけれど。
仕事の時間帯が違うのだから仕方が無い。

「まだ昼じゃないよ?」

彼は布団に潜り込んで聞こえないふりをする。
もぞもぞしながら私を布団の中に入れるときつく抱き締めた。
私の胸の辺りに顔を置いて上目遣いでこちらを見る。
とても何か言いたそう。

「どうしたの?」

「まっすぐ家に帰って来て」

「貴方はいないのに?」

以前ならこんなことを言う男に興味は無かったはずだ。
まるで子供。
自分には家で待っている妻がいるというのに。

「心配だから」

「心配?」

「男と一緒じゃないか、とか」

この人はどうしようもない人だ。
そしてとても不安なんだ。

「嫌なの?」

「嫌だよ」

「わがままだね」

「わかってる」

だから朝早く来たりするのか。
私が部屋にいなかったらどんな顔をするのだろう。
彼は自分のしていることをよくわかっている。

だからすごく怖いんだ。

「カーテン閉めようか」

私は彼が開けたばかりのカーテンを閉めた。
部屋はあっという間に真っ暗になる。
彼の耳に口づけて囁く。

「昼寝しよう」

彼は何も言わずに私をもう一度抱き締めた。

どうしようもなく彼が愛しくなる。
2日前よりも、もっと。

本当は一秒だって離れていたくないのに。
それでいいのに。
言えなくなったのはいつからだろう。
カーテンを閉めて気持ちを隠すように。
私たちは大人になり過ぎてしまった。


彼の言葉に出来ないメッセージが胸に響いた。