次の朝、すっかり目は腫れていた。

まだお昼前だ。
いつもよりも早起きしてしまった。
祝日なので仕事も無い。
こういう時は何も考えずにグラスでも磨きたい。

サイドテーブルの上のクールマイヨールを一気飲みする。
昨日失った水分を取り戻したような気がした。

せっかく前向きになれたんだから、落ち込んでても仕方無い。

カーテンを開けるとやわらかい陽射しが射し込む。
この部屋は陽当たりだけはいい。
そこが気に入って決めた。

シャワーを浴びて、打ちっぱなしでも行こうか。


シャワーを浴びるとだいぶ落ち着いた。
冷蔵庫から野菜ジュースを出して飲む。
ドライヤーで髪を乾かしていると、インターホンが鳴った。

「お届け物です」

通販で何か頼んでいただろうか。
母からかもしれない。

「はーい」

玄関を開けて驚いた。


ウサギを抱いた彼が立っていたから。


「おはよう」

彼はにっこりと笑った。

「どうしたの?」

「プレゼント」

彼はウサギを私に抱かせた。
空いた両腕で私を抱き締めると頬にキスした。
私は呆気に取られた。
何が起こってるのかさっぱりわからない。

「どうなってるの?」

「ウサギ欲しいって言ってたから」

確かに、昨日ウサギの話を彼にした。
近所のペットショップで見かけたのだ。
ピーターラビットのモデルになった灰色の仔ウサギ。

「覚えてたんだ」

「昨日聞いたばっかりじゃない」

私の腕の中でウサギは暴れている。

「ちゃんとケージと餌も買ったよ、ほら」

彼の後ろには大きな段ボールとビニール袋が置いてある。
彼はちょっと誇らしげに笑った。

「ありがとう」

笑顔を作ったけど、上手く笑えた自信はなかった。


彼もウサギもどうしたらいいのか、わからない。