2杯目の紅茶はすぐに出てきた。

今日のおすすめは蓮の花の蜂蜜。
蜂蜜は好きなものを選ぶことが出来る。
なのに私たちはいつもおすすめを頼んでしまう。

「奥さんと別れてって言ったら?」

「そんなこと考えもしなかった」

「奥さんがいてもいいの?」

「良いとは思ってない」

栞はさっきからひっきりなしに煙草を吸っている。
灰皿がもういっぱいだ。

「まどかは彼を知らなすぎると思う」

そう言われると私は彼を何も知らない。
彼も私を知らない。
何も知らないのに離婚してって言うの?
言えるはずかない。

「そうかもね」

本当は知りたくないのかもしれない。
彼の生活とか家庭とか仕事とか。
私はきっと彼の余計なところまで見たくないのだ。
目の前の彼だけで何がいけない?
私は他に何も望んでいないのだから。
伝えたいことはやっぱり上手く言葉にならない。
まっすぐ目を見られなくて、栞の長い睫毛ばかり見ていた。

「まどかは頑固だね」

「栞は理屈っぽいわ」


しばらく黙ったまま二人で庭を眺めていた。