「市井聞いてる?このあともう女子送ってー……て、何見てる?」
ぼんやりしていた俺の視線を追う久保の、
「あ、あれお前の姉ちゃんじゃん」という言葉にはっとする。
一気に現実が押し寄せる。変な汗が一滴額を伝った。
だって……
姉ちゃんはパンの耳を右手に、左手に実の手、今は正に魚屋で金を払わずになにか貰っているところで――――
「違うくね?姉ちゃん今日寝てるし」
気付けば口からするすると嘘の言葉が流れていた。暗記したままを話す大根役者みたいに――
男物の色褪せた紺のポロシャツに、型遅れのだっせぇデニム。
そしてそれを覆す美しい容姿。
―――どう見たって姉ちゃんなのに。
だって……
「えぇーあれが炊き出しか」「ウケる!まじシャー芯」
だって…