「あれー?先客?」
振り向けば、女子生徒が一人歩み寄ってきた。
「誰だよ、テメェ失せろよ」
「お昼からの授業ってーなぁんかやる気しないんだよねー」
女子生徒は俺のとなりに座ったかと思うと呑気に欠伸をした。
子猫が大口開けてするような大胆な欠伸。
「聞こえてんのかよ、消えろっつてんだよ!痛い目に遭いてぇのかよ!」
俺は彼女の澄んだ丸い瞳の前に煙草を突きつけた。
煙は変わらずユラユラ不安定に頭上を泳いでいる。
「……知ってるよー。君のこと。……いきなり不良になった優等生くん」
彼女はあざ笑うかのような表情を浮かべて、さっきより1オクターブ低い声でポツリと呟いた。