「……できたよ」


どれくらい時間がたったのだろう。

一瞬だと思っていたけれどカーテンの向こうはもう薄暗くなっていた。

あたしは時間の感覚さえ奪われてしまっていたのだと今になって気付く。


魔法の時間が終わったみたいに康介が描き終わったらあたしの羞恥心はいきなり開花して、いそいで服をきた。



「協力ありがとう。感謝するよ」

さっきの突き刺すような表情とは一変した穏やかな笑顔。

あたしはぎこちなく会釈をする。


「完成の絵は、ここにきて見てほしい」


そう言って渡されたのは美大のイベントのチラシだった。


そしてあたしは絵の具の匂いがこびりついた部屋を後にした。