「きみ、名前は?」

康介は何やら忙しそうに用意しながら言った。

「亜美」

「亜美、じゃあ脱いで」

「はい?」

思ってもみなかった言葉に驚きを隠せない。
顔をしかめて康介を睨んだ。
康介はあたしが驚いたことが意外なことみたいな顔をしている。

「あれ?言わなかった?次、描くのはヌードなんだよね。それに承諾して来てくれたんだと思ってたんだけど…」

そんなの一言もいってないし聞いてない。
絵のモデルになることは渋々オーケイをだしたけれど、ヌードになることを了解した覚えはない。


「帰る!」

あたしは急いで立ち上がり部屋をでていこうとする。
康介は慌ててあたしの右腕を掴みひきとめた。


「待ってくれよ!ヌードはたんなる性欲じゃない!美なんだよ!そりゃあ亜美はまだ高校生だし抵抗あるかもしれないけど、これは神聖なアートであって……」

必死な顔で語る康介。
あたしの右腕は彼の熱意で折れてしまいそうなくらい痛い。

「違うの…。美術のなかのヌードを否定したいんじゃない…。あたしじゃ駄目なの…。あたしの身体は駄目なの…」

「……どうして?」

「あたしの身体には火傷がある……」