エレベーターで7階へと上がる。


「ごめん。散らかっているけど」


扉をあけ、鍵を閉めた。


「お願い」


そう言って智子はアッサムの缶を秀明に渡した。


「体温(ねつ)計った方がいいですよ」


「うん」


そう言ってソファに座ると救急箱から体温計を取り出した。1分ほどで電子音が鳴り響く。


「どうでした?」


ジンジャーティーの入ったカップを智子の前に置きながら尋ねた。


「38度6分」


そう言って体温計を渡す。


「病院いったほうが・・・・・・」


「大丈夫。それに病院嫌いなんだよね」


カップに口をつけながら呟く。


「嫌いって、医者になろうとしている人が何言ってるんですか」


「嫌いなものは嫌いなの」


洗ったカップを元の位置に戻すと、秀明は智子の方に向き直った。


「お大事に。何かあったらPHS(ピッチ)にかけてください」


「ありがとう。おやすみ」
閉められた扉越しに聞こえる足音が遠ざかると、ソファーに崩れ落ち、激しく咳き込んだ。


「・・・・・・る」