「お前、時々突飛な行動に出るよな……」
 苦笑いを浮かべながら、ロップがドラム缶の椅子に腰掛ける。
「ほとんど誰のせいだと思ってるのよ」
 もちろん私のせいじゃない。
「ははっ! 誰だろうな。それよりも、冷たいあいつらがさっさと帰っちまったのは失敗だぜ」
「?」
 いつものように軽口を叩く悪友は、いつも以上に目をキラキラ輝かせて、泥と汚れでボロボロな半袖のジャケットに手を入れた。
「今日は巡回の監視がやけに厳しくってさ。お陰で奴らの目を盗んで盗ってくるのに時間がかかっちまった」
 ジャケットの内側のポットををごそごそと漁りながら、幼なじみの悪友は続ける。
「まさか! ロップ、あなた軍の倉庫に忍び込んだの!?」
「まあな」
 軍――つまり“ソラルリラ駐屯軍”とは、私が生まれる前からこの国の五つの町の治安を保っている、遠い大国の部隊の一軍だ。
 その駐屯軍の上層部はこの国の政治にすら口を出せる権力を持っている。ソラルリラの五つの町の代表から選挙で選ばれる統領は形だけのお飾りで、その実、裏では駐屯軍によって実権を握られている……などとは、よく聞く巷での噂話だ。
 その軍の倉庫に忍び込み、あまつさえ盗みを働いてくるなんて、
「バカじゃないの!? じゃなかったらその神経は異常よ! ロップ……見つかったら殺されても文句は言えないのよ……?」
「お、おい! 泣くなよ」
「うるさい! ……ズズッ。泣いてなんかないわよっ!」
 目の前にいる親友が無事だったと分かっていても、もし見つかっていたらと考え、友達が背中から撃たれる瞬間を思い浮かべて、頬を熱いものが伝った。
 ダメだ。昔から泣き虫だけは治らない。
 実は怒りっぽい所も昔からなのだが、そこは私の認知外。
「ほら、怪我もしてないし、大丈夫だから、な?」
 ロップが心配で泣いて、逆に相手から心配されていては本末転倒だ。
「うん……」
 私が泣いて、彼が慰める。その構図は、ロップと昔から重ねてきたスキンシップのようなもの。
「俺はそう簡単には死なないさ。どのくらいお前の幼なじみをしてると思ってるんだ?」
「14年と11ヶ月」
「そう、そしてお前はあと一週間で15になる」
「あ……」