神代「このっ、くそっ!」
神代は松岡に何度も拳をふるいますが、
松岡はそれをいとも簡単そうによけました。
松岡「おっせえパンチだな。殴る気あんのか。」
神代「お前こそ殴る気あんのか!全然攻撃してこおへんやん!殴る気あらへんやろ!ちくしょーナメやって!ほな千咲!終わったか!」
千咲「神代サン、終わったヨ☆この子弱い弱い。アハハッ!」
壁際にうずくまる小嶋を足蹴にしながら
千咲はお茶目に笑いました。
丸内「こっちも終わったでごわす。」
床にのびている牧野をつついて、
起き上がらないことを確認しながら
丸内は言いました。
空「ちッ!あいつら弱いな…!」
長谷川「おぬしも弱いでござるぞ!!」
長谷川は竹刀を振り回しながら
空にむかって走り出しました。
空「残念だけど、ボクはあいつらとは違うんだよね!」
空は長谷川に足をひっかけ、
竹刀を奪いとると、
見えない速さで長谷川を切りつけました。
竹刀で。
長谷川「…Oh、no!」
空「わかってないねー」
空は竹刀を肩に担ぎ、
ニヤリと笑いました。
神代「なんやて…長谷川がやられたやと!?」
神代は後ろ方向に飛んで、
松岡と距離をおいてから
そう言いました。
千咲「へぇーあの子は強いんだ☆ボク、遊びたいなあー」
丸内「無茶は禁物でごわす。」
神代の横に並んだ二人が言いました。
神代「まあ待てや。松岡の強さは半端あらへん。せやから、オレと丸内で行くで。千咲は、それまであの子と遊んどり。」
千咲「リョーカイッ☆そこのキミ。ボクが遊んであげるよ!」
空「あれ?なんだかすごいナメられてるなあ。てかあんた、ボクと少しだけキャラかぶってんだよね。牛乳の飲み過ぎでしねば?」
千咲「なにそれ、ムカツいたー。キミ、泣くはめになるよ☆」
千咲は空にむかって走り出し、
足を振り上げました。
空「……はやい!」
少し反応が遅れたものの、
空は、間一髪。
竹刀で千咲のかかと落としを止めました。
千咲「やるじゃん。これなら楽しめそう♪」
空「…ははっ。ムカつく。」
空は千咲を突き飛ばし距離をおいて、
痺れる手を抑えながら竹刀を構えました。
神代「行くで、丸内!」
神代の掛け声と共に、
巨体の丸内がものすごいスピードで
松岡にむかって突進してきました。
松岡「牧野がやられたやつか…!」
松岡がかろうじて
丸内の巨体をよけた、その途端。
神代「ガラ飽きや!!」
足を振り上げた神代が
丸内の巨体の影から現れました。
松岡「…!!」
不意の出来事だっため、
松岡はどうする事もできずに
神代の回し蹴りをくらって、
地面に倒れ込みました。
松岡「ぐはっ!」
神代「ははっ、腹モロ入ったで!起き上がれへんやろ!丸内ナイスプレイや!千咲、そっちはどうや!?」
神代が振り向いた先には、
空を押し倒して
ニヤニヤと笑う千咲がいました。
千咲「神代サーン。この子も弱かったー!」
神代「ふう。長谷川はやられたが、素人なんてこんなもんやろ。総長はん…これでどうや。」
神代はニヤリと笑いました。
義男「おぬしらは何もわかっておらん!だから負けるのじゃ!」
いきなり、義男総長は怒鳴りました。
神代は自分が怒られたのかと
ビクッ、としました。
とかいうどうでもいい情報。
義男「どうしたら勝てるのじゃ。よく考えろ!負けてよいのか、篤也を助けるんじゃなかったのか!」
義男総長の言葉に、
松岡が、空が、牧野が、小嶋が、
ピクリと体を動かします。
空「やだ。助けたい…」
小嶋「オレは助けられた!」
牧野「今度、は、俺が、助ける。」
松岡「借りは返す、主義なんだ。」
四人はフラフラと立ち上がりました。
神代「た、立たせおった…。総長、ボコボコにしろとおっしゃったやないですか。あなたは、何がしたいんや。」
松岡「おい、お前ら。いい考えがあるんだ。協力しろ。」
小嶋「なんだよ、今さら協力戦?遅ェよ!オレ弱ェんだから助けてくれよ!痛ェよ!バカ!」
空「小嶋と牧野は限りなく弱いからね。協力戦か…。いいよ、嫌いじゃない。」
牧野「弱くて悪かったな。話、聞こう。」
四人は集まって、
ああだこうだと
作戦をたてはじめました。
義男「やっと気づいたかのお。」
神代「…は?」
義男「一人で駄目なら二人。それでも駄目なら四人じゃ。仲間を信じない奴は、誰も助けられりゃせんからの。」
義男総長は頷き、笑いました。
松岡「わかったな…行くぞ!!」
松岡の合図ともに
四人はいっせいに走り出しました。
全員で、丸内に向かって。
神代「なに!?」
丸内「ごわすでごわすか!?」
空「ワケわかんないよ!」
先陣を切って走っていた空は、
丸内を切ろうと竹刀をふり上げました。
丸内「させるかでごわす!」
丸内もそれにあわせ、
カウンターを入れてきました。
神代「バカヤロー!下だ!」
しかし、神代が叫んだ時には、
もう遅かったのでした。
パンチは空気をつかみ、
丸内は空回りしてよろけました。
そしてそこに、
松岡に投げ飛ばされた小嶋が飛んで来て、
丸内の顔面に直撃しました。
ふと下を見ると、
しゃがんだ空がニヤニヤと笑っています。
空「バーカ!」
丸内「おとりでごわすか…!」
若干フラフラしながらも、
丸内はかろうじて立っていました。
松岡「やっぱり打たれ強かったか…。だけどなあ!!」
松岡は叫びました。
松岡「牧野行けっ!!」
ドゥルルルブルンブルン!!
松岡が指差した先には、
バイクに乗った牧野が。
神代、義男「どこから持ってきたのー!?」
牧野「アーハッハッハ!!オレは風になる!何人たりとも邪魔はさせねえぜ!!」
小嶋、松岡、空「キャラ変わっとるー!!」
牧野「ブッ殺してやんよー!!!☆」
牧野は満面の笑みで
バイクのエンジンをかけると、
丸内に向かって走り出しました。
丸内「ひっ、ぎゃあああ!!」
丸内は吹っ飛ばされ、
壁に当たり、気絶しました。
牧野「やってやったぜ☆キャッフゥー!!」
小嶋「オマエ誰ー!?」
空「ばか!次行くよ!」
そう言うと空は神代に
向かって走り出しました。
神代「ええっ次オレー!?このノリやと、本来なら次は千咲やろ!!」
千咲「ドンマイ神代サン☆どうやらボクの方が格上に見えたらしいねー!」
神代「千咲のドアホー!!」
松岡「…いや、神代が正解だ。」
千咲は息を飲みました。
なぜなら、
千咲が振り向くとそこには、
足を振り上げた松岡が…。
千咲「きゃんっ!!」
千咲は軽々と松岡に蹴飛ばされ、
壁に当たり、気絶しました。
神代「……ははっ、ウソやろ。」
松岡「やっぱりスピードだけだったか。よくやった、空。」
空「ボクおとりしかやってないし!」
小嶋「ハッ!オレなんか投げ飛ばされただけだぜチクシャー!」
牧野「アーハッハッハ!風になってやるぜ☆見ていろ神様ア!!」
義男「おうおう、ようやりおるわい。思ったより松岡は強かったのお。」
義男総長は腕を組み、
ガハハハと笑いました。
神代「総長はんのドアホー!もうオレ、一人なんやけど!もっかい言うけど、一人なんやけど!」
義男「じゃあ本気で行くがよい、手加減は無用じゃ。」
義男総長にそう言われ、
神代は一息ため息をつくと
低く、低く身構えました。
神代「せやかて総長。コレむっちゃ疲れるんやもん…。」
そうつぶやいた、そのとたん。
小嶋、牧野、空。
そして松岡でさえも、
一瞬で、視界の中から
神代を見失ってしまいました。
松岡「…どこ行った!?」
神代「ココや。」
一瞬のことでした。
松岡は思いきり腹を殴られ、
うずくまってしまいました。
松岡「がっ……くそっ…たれが!」
空「ぬあっ!」
どうやら空も
同じことをされたようです。
うずくまって、うなっています。
牧野「キャーハー!どこ行ったー?ブッ潰してやん…」
とかなんとか言っているうちに
牧野もやられてしまいました。
小嶋「キャーッ!バカヤロー!」
神代「あと一人やな。しかも、一番弱い奴。」
小嶋「うっ、うるせーッ!オレだって、あーちゃん助けてやるんだッ!!」
小嶋はどこにいるのか
わからない神代にむかって叫びました。
神代「ムリや、ムリ。さっきの見とっても、オマエだけレベル違てんのやし。」
小嶋「チクシャー!ムリじゃねえバカヤロー!!」
すると突然、
義男総長が立ち上がって叫びました。
義男「そうじゃ。無理、なんてことは、この世には無い!!」
そして、小嶋に何かを投げわたしました。
神代「ン?なんや?」
小嶋「…バスケットボール。」
そう、小嶋が受けとったのは、
バスケットボールだったのです。
小嶋はニヤニヤしながら
ボールをつきはじめました。
そして小嶋は、
小嶋「き、キャッホウウ!!バスケ!バスケだッ!わーいキャッホウウ!!」
とかなんとか叫びながら、
ものすごいスピードで
柔道場の中をドリブルで
爆走しはじめました。
どれだけ速いかというと、
かろうじて目をあけていた松岡、
今まですごいスピードで
移動していた神代、
そして、義男総長。
誰ひとり、小嶋のことを
目で追える者はいませんでした。
神代「バリはやーッ!鬼はやーッ!何も見えへん!キャッホウウ!!、っていう雄叫びしか聞こえへん!どこや!?どこにいるんや!?」
しかし小嶋は、
いっこうに爆走をやめる気配が
ありません。
そのときです。
牧野「小嶋。パス、しろ!」
牧野が絞るような声で叫びました。
小嶋「あッ、そうだった。わりいわりい。オイそこの白髪!パスいくぞーッ!」
神代「なんや!?パス!?攻撃やのおて、パス!?はっ、もしかしてさくせ……」
神代が気づいた時には、
もう遅かったのでした。
神代は、小嶋の『殺人パス』を
顔面に受け、背中から倒れ、
気絶しました。
小嶋「あっ、いけねッ。オレのパス、あまりにも速くて、あまりにも強すぎて、怪我人続出したからバスケやめさせられたんだった。ゴメン(笑)」
義男「…おぬしはどんなバスケ人生を歩んでおるんじゃ。」
神代「ま、負けてもうた…。」
義男「こやつら、思ったより強いのお。よし決めた。吉田組に入れ!」
神代「えええ総長ー!ほなオレは、白虎クビですかー!!」
義男「うるさいな。クビにはしないわい。」
神代「良かったアー!長谷川!丸内!千咲!起きろ!オレ、クビちゃうねんでー!!」
千咲「うるせえな。とっとクビになれよ、雑魚。」
神代「千咲ー!?神代サン涙目!」
とかなんとかやってるうちに、
松岡や空、牧野は
立ち上がれるまでに回復しました。
義男「おぬしらはよくやった。連れていってやろうかの!」
小嶋「ホントか!?やった!待ってろあーちゃん!」
牧野「…よく、覚えていない。」
空「ボクのおかげだね!」
松岡「…ありがとうございます。」
義男「ふむふむ。元気で何よりじゃ。それじゃあ、一時間後に出発するから、支度せえ。」