「―――――。」

ふ、と気が付くと、目の前に少女が居た。

名も知らない、少女。

「・・・誰?」

出てきた言葉はそんな間の抜けた疑問符。

「だあれだ」

クス、と小さく笑う。

楽しんでるようにも、嘲笑うかのようにも見えるその笑い方に少し嫌な感覚を覚える。

眉間に皺を寄せ考えていると、また少女はクスクスと笑いだす。


そして一言。

「無いよ」

と。

何が、と問うと名前が、と返ってくる。

「だからさっきの質問の答えも」

「はあ・・・」


随分不思議な子だ、と思う。

素足に、今にも消えそうな程薄い蒼色の、とても綺麗な長い髪。


「・・・もしかして、幽霊?」

至った結論はそんな非科学的なもの。

でも目の前の少女はすぐに首を振った。

そして、

「なんだろうね、」

―なんだと思う?、と一言。


また最初のような違和感のある笑い。

クスリ、と。


「・・・じゃあ、死神とか」

「違うよ」

またすぐに返ってくる答え。


「ねえ、怖い?」

す、と少女の中から全ての表情が一瞬で消え去った。

自分は、そんな事は無い、と首を振る事しか出来なかったが。


そっかぁ、と今度は違和感など全く感じさせない笑みが零れた。