ゆかりが玄関を開ける。
そこには小綺麗にしたハンサムな男性が立っていた。年は三十代だろうか。
男はにっこり微笑んで言った。
「こんにちは。私はこういう者です」
と、名刺を差し出した。

「超現象管理人 総裁 鷺ノ宮佳伊(さぎのみやかい)?」
ゆかりは怪訝そうに見つめる。
笑顔のままで続けた。
「我々は超常現象を管理する政府公認の極秘組織です」
「家に何か…」
「昨日うちの部下が喋る金魚を目撃しましてね、悪いとは思いましたが調べさせてもらいました」
その途端ゆかりの表情が変わった。
「家にはそんな金魚はいません!!帰ってください!!」
無理矢理、佳伊を外に出す。
「いや、ちょっと待ってください。私は…」
バタン!!とドアを閉め鍵をかけた。
「見られてた…?」
ゆかりはガクガクと震え座りこむ。
「今のって…」
和幸も愕然としている。
その時園実が部屋から出てきた。
「誰か来たの…?」
ゆかりは園実をギュッと抱き締めた。
「大丈夫よ、大丈夫」
しかしその手は震えていて何かがあったのは園実にも分かった。



佳伊はポリポリと頭をかいた。
「嫌われちゃったなぁ」
すると車で待機していた部下が言う。
「普通警戒しますよ」言いながら後部座席のドアを開ける。
「だよね。ここ見張ってて。何かあったら即連絡」後部座席に座る。
「はい」そう言ってドアを閉める。
そして車は走り去った…