以前3人で泊まった事のあるホテルで部屋を取ろうとフロントに行くと和幸が待ち構えていた。
「何でわかったの?」
「お前の考えることくらい分かるさ!!家族だぞ!」
「みみはいい研究材料だ!学会に持って行く」
「まったくわからず屋ね!」
そっと園実は隠れる。
「あなたには時間がないのよ」
ため息混じりにゆかりがうなだれる。
「誰が!!ピンピンしてるだろうが!死んだら動かないものだぞ!!」
「だからそれは私達がね…」
そこで気づく。
「園実!?どこ!?」
2人は慌てて探す。
ゆかりはすぐに見つけホテルから逃げた。

コンビニでビニール買って近くの公園で水を入れる。
「ふ〜行き返った〜」

呑気なみみの声を聞き2人はほっとする。

園実は不思議な力をゆかりから譲り受けた。
でもそれは2人の秘密。和幸は知らない事だった。

ところが園実が可愛がっていた金魚と喋りたいと言葉を与えてしまった。
それに気付いた生物学者の和幸がみみを持ち去ったのがこの追いかけっこの始まりでした。

2人は別のホテルにチェックインした。
みみがぽつりと言った。

「やっぱり金魚が喋るのはおかしいかな」
「そんなことないよ!!」
「でもこんなことになって…」
それを聞いていたゆかりがそっと言う。
「みみ、私達はあなたと喋れて嬉しいのよ。あんなわからず屋は放っておけばいいのよ」

「でもこのまま逃げ続けるの?」
名案なんて浮かばなかった。

ゆかりが園実の能力に気付いたのは園実が4歳の時だった。
飼っていたインコが死んだ時園実は大泣きし、大声で叫んだ。
「生き返ってぇ!」
すると空間がバチンと音をたて、インコが生き返ったのだ。

この瞬間ゆかりは自分の能力が遺伝してしまった事に気付いた。誰にも言ってない秘密。母しか知らなかった。

しかし死を操るのは自然界に背くことになる。
ゆかりは園実に感情を出さないように育てた。
生き返ったと言っても数日の話でインコはまた死んで生き返ることはなかった。
そう、生き返るのは一回だけ。
何故、そうなのかゆかりにも分からない。
でも一回なのだ。
すやすやと眠る園実を見て、ため息を1つ。
数日しか持たないのだ。この不思議は。

「家に帰るかな…」
月明かりの中で呟いた。