「先生」


「は、はい」


「こいつ朝から調子悪そうなんで、どっか休める場所連れてっていいっすか」



――ドクン。



思いがけない翔の言葉に、わたしの心臓が音を立てる。


それでもまだ、翔の手はわたしの腕をきつく掴んで離さないまま。


すると、それを見ていた先生はうろたえるように口を開いた。



「え、ええ…。
それじゃあ…お願い、しようかしら」



とつぜんの出来事に戸惑った様子の先生は
翔の言葉を簡単に承諾してしまう。


わたしはとっさに首を大きく横にふって必死の抵抗をした。



「い、いい…っ!わたし、大丈夫だから…!」



そう言って

今もわたしの腕を掴んで離さない翔の手を、無理やり振りほどいて逃げようとしたその時


まるでそれを許さないとするように

さっきよりも強い力で腕をつかまれる。



そして翔は、わたしの腕をつかんだまま

ココから出ようと、強引に歩き出して…



「翔っ…!離して…っ」



今もまだクラクラする頭の中



「いいから来いよ」



そう言い放つ翔の声が


確かに聞こえた。