「ううん、そんなことないよ。
それにねだって昨日、あの翔が直哉くんのこと素直にすごいって認めてたんだよ」

「え?」

「自分と同い年なのに考え方も行動もすごい大人で、自分にはしたくても出来ないって。
それに直哉くんなら、わたしをちゃんと笑わせてあげられるとも言ってた」

「……!」

「だから大丈夫。
…なかなか口には出さないかもしれないけど、翔も本音は直哉くんのことすごく尊敬してて、感謝もしてくれてると思う。
だからきっと、これからは二人もっと仲良くなれるよ!」



“ほんとはアイツ…スゲーと思う。
タメのくせに考えてる事はものすごい大人っつうか
加奈子が喜びそうなこと普通にやってのけるし、俺が一生言ってやれねーようなことも自然にサラッと言うし。
…ホントはやっぱまだ認めたくねーし、俺が言う権利もねぇんだけど。
でも新垣ならお前をちゃんと、笑わせてやれっだろうから…”



――昨日、あの翔がさり気なくわたしにそう呟いていたこと。


その話しを今になってようやく打ち明けてみせたわたしに

直哉くんはしばらくの間
ものすごく驚いた様子で目を開いていたあと、どこか照れくさそうにして笑った。


「…はは、そっか、そうなんだ。
それじゃあ今度、がんばって声かけてみようかな。広瀬くんに」

「……」


幼なじみの翔と、同じクラスの直哉くん。


なにもかも正反対の二人が、いつかわだかまりも全部消えてごく普通に話してる。

そんな明るい未来も――そう遠くないような気がした。




「加奈子たちぃ、さっきから何してんのー?出発するよ~!」


そのことをひたすら嬉しく思っていると、ふいに玄関の方からあさみちゃん達の明るく呼ぶ声がして

わたしと直哉くんは思わずハッと後ろをふりかえる。


「早くぅーーー!!」

「は、はーい!今行くー!
もう出発だって、行こっ直哉くん!」


――出口の向こうは、溢れんばかりのまぶしい日差しが照らしてて

わたしは笑顔で返事をすると、勢いよくここから走り出した。