「はぁっ、はぁ…」



ほかの生徒たちは皆、朝食をとりに部屋を空けている中、
ひたすらシンと静まりかえったホテル内の廊下を、わたしは一人バタバタと歩きまわる。



(翔たちどこにいるんだろ、…あっそうだ、ケータイ…!)



せめてあの二人が今どこにいるのかだけでも知りたいと思い

とっさにポケットからケータイを取り出し、中身を開こうとした次の瞬間

わたしはある事に気がつき、ハッとする。



(…そっか。わたし、翔のケータイの番号はもちろん、メアドすら知らないんだ…)



今までずっと、ケンカばっかりしてたから……――



そう思ったら無性に悲しくなってきて

翔の名前すら入っていない、自分のケータイのアドレス覧を見つめたまま、しばらくの間途方にくれていたそのとき、


どこからかふいにカツン、というヒール音が聞こえたかと思うと

向こうの方から、なにやらこっちに向かってツカツカと歩いてくる春野先生が見えた。