そんなことを思いかけようとしたとき
ふと側までやって来た詩織ちゃんに名前を呼ばれ、わたしはハッと我にもどる。


「え?」

「加奈子、ほんとは今までずっと広瀬くんのこと好きだったんでしょ?
この修学旅行でやっと気持ち伝えられたみたいで、良かったね」

「!」



“だからわたしは翔のこと、別になんとも思ってない”



思いがけないその言葉に、わたしは大きく目を見開いて。

こうしてる今も目の前では詩織ちゃんとあさみちゃんがニコニコと嬉しそうに微笑んでる。



「そうそう!やっぱりなんでも素直がイチバン♪だよねっ」

「そういうあさみは、少し見栄張ったくらいがちょうどイイと思うよ」



えぇ!ちょっと詩織なにそれ、どーゆう意味ー?



また始まりだした二人のいつもの言い合いに
さっきまで焦ってた気持ちも忘れ、思わず自分まで吹き出しそうになりながら…


しばらくして、わたしは満面の笑顔を向けると、大きくこう頷き返したんだ。



「……うん!」





――その日の夜は
あまりよく眠れてなかったせいもあってか、ベッドに入ってすぐまぶたが重くなって。


ウトウトと、ただただ心地のいい意識の中

前にわたしが貧血で倒れそうになったいつかの日、
夢で見た、翔に強く抱きしめられるようなあの…温かな感触は

もしかしたら本当に――夢じゃなかったのかもって、ふと思った。



「……」



トクン、トクン…






“…加奈子”





とても、――愛しいと思った。