「!? 加奈…」

「なんで…っ?!
なんでそっちばっかり!さっきから言いたいこと言って
どうしてわたしの言うことは全然…、ちっとも聞いてくれないの?!」

「!…それは」

「ほんとはわたしだって言いたい、翔に謝りたい…!
もちろん、直哉くんとは一緒にいてすごく安心するし、信頼もしてるよ。
けど、それは気の許せる仲間とか友達としてで、
だからそれでわたしと直哉くんが付き合ってるとか、そういうんじゃないんだよ…!」



なのに翔ってばさっきから一人でものすごい誤解して、勝手に話し進めてくし…!



――怒りたいのか謝りたいのか、

それすら自分でももうよく分からなくて
ただただ、こらえていた涙が止めどもなく溢れてくる。


そしてそのままとうとう一気にワァーッ!と声をあげ泣きじゃくりだしたわたしに

さすがの翔もビックリしたのか、思わず「!」と肩が揺れたかと思うと
驚いたようにこっちを振り向いた。



「…ご、誤解って。
つか、だって、あんとき加奈子はアイツと……」

「直哉くんには今日公園で告白されたの。
けど、あのあと断ったんだよ…!」

「は!?断った…?」



なんで…



そう言いかけて
ただ茫然と立ち尽くしたまま、こっちを見つめてくる翔に

涙を拭ったわたしはとっさに自分の口を強くかみしめると
精一杯の勇気をふりしぼり、ハッキリとこう言った。



「…っ、だって、
わたしは今ここにいる翔のことが、“好き”だから……」