見られてたんだ……!!
「ね、ねぇ翔!わたし…っ、直哉くんとは……――」
「本音はずっと、お前を他の誰にも取られたくなくて
あからさまライバル心むき出しっつうか…、
わざと、けなすような事言いまくって、二人を遠ざけようとか、ついガキみてーなことばっかやってたっけどさ。
ほんとはアイツ…スゲーと思う。
タメのくせに考えてる事はものすごい大人っつうか
加奈子が喜びそうなこと普通にやってのけるし、俺が一生言ってやれねーようなことも自然にサラッと言うし。
…ホントはやっぱまだ認めたくねーし、俺が言う権利もねぇんだけど。
でも新垣ならお前をちゃんと、笑わせてやれっだろうから…」
「っ…」
「だからもう俺は二人のジャマになるようなことは二度としないし、今日できっぱりと諦める」
今まで何度も泣かせてばっかで
最後の最後まで傷つけてやることしか出来なくて“ごめん”
不器用な口調でそう告げ
一度もこっちを振り向かないまま、一人黙って部屋を出ていく翔。
目の前で大きく開いていたドアが、ゆっくりと閉まりかける。
翔のいなくなる足音が、遠くなっていく。
――バタン
「……」
ドクン
ドクン…
“だからもう俺は二人のジャマになるようなことは二度としないし、今日できっぱりと諦める”
“今日これから加奈子ちゃんは広瀬くんにちゃんと、言うんだろ?
好きって”
“実はね、あたし
翔と付き合うことになったの”
…今さら言い訳したところで、何も変わらないかもしれない。
今なにを言ったって
もうムダかもしれない。
…でも
自分はそれで満足なの?
ホントにいいの?
ほんとうに、――このままでいいの?
“――これからは自分の気持ちに素直になって、この想いを翔にちゃんと伝えるんだ”
ドクン
「……っ、待って!!」
その瞬間、わたしはとっさに部屋を飛び出していた。